「公共サービスにもっと投資を」~今、担い手不足が限界に達している~
「窓口の待ち時間が長い」「いつもの公園が以前より荒れている」「バスが減便された」「病院の検査や会計でも、なかなか呼ばれない」
そう感じたことはありませんか?
道路・交通、上下水、保育、医療、介護、そして防災。私たちの生活を24時間支える「公共サービス」というインフラが、いま、かつてない危機に瀕しています。業務はデジタル化で効率化される一方で、児童虐待や孤独対策など、より「人による深い関わり」を必要とする課題が急増しています。しかし、現場を支える職員の数は減り続け、精神的な不調を訴える人は10年前の約1.9倍にまで達しました。「効率化」という言葉の陰で、現場の「人」が削り取られてきた結果、かつての「あたりまえ」が維持できなくなりつつあります。
質の高いサービスを次世代につなぐため、いま一度、公共サービスの「担い手」への投資について、一緒に考えてみませんか。
仕事は増え、人は減る。――「効率化」が限界を超えている理由
地方分権によって「地域独自のサービス」が可能になった一方で、その膨大な実務と責任はすべて現場の職員が背負うことになりました。
「かつてより少ない人数で、かつてより高度で多様な仕事をする」。
この「無理な方程式」を職員個人の努力で解き続けるのは、もはや限界です。現場の余裕が失われることは、そのまま「公共サービスの質の低下」に直結しています。
地方公務員数の推移
1994(平成6)年をピークに、地方公務員数は約23万人削減されました。特に一般行政部門は、かつての水準を下回ったまま推移しています。


命を守る部門は急増するも、生活の土台となる部門は一向に…
自然災害の激甚化や社会問題への対応のため、消防や警察などの「命を守る部門」の人員配置は優先されてきました。しかし、日々の暮らしを支えるサービスの担い手が不足したままでは、地域の安心を持続させることはできません。特に福祉や教育、役所の窓口といった、住民に最も身近な「生活の土台」を支える部門では、業務量に見合う人員増につながっていないのが現状です。
2000(平成12)年の「地方分権一括法」の施行以降、国から自治体へと膨大な事務と権限が移譲されました。職員数はかつてより少ないにもかかわらず、法改正への対応、DX推進、さらには複雑化する住民ニーズなど、職員一人が背負う責任と専門性は格段に増しています。
このように、自治体による一体的かつ迅速な行政の展開が住民の利便性を向上させた一方で、現場への負担転嫁と慢性的で深刻な人手不足が、今や行政サービスの限界を招いています。
【コラム:現場から届いた切実な声】
制度が変わり、便利になるその裏側で
私たちが毎月実施しているアンケートの自由記載欄には、多くの現場の声が届きます。統計や数字には表れない、公共サービスの担い手たちの切実な声をご紹介します。
- 「人員不足で長時間労働が続き、職場はいつもギスギスしている。次は自分が倒れる番ではないかと、毎朝不安になる。」(30代・技術職)
- 「『公務員ならこれくらい我慢しろ』という過度な要求や暴言を日常的に受けている。心を守りながら働き続けるのは、もう限界だ。」(40代・福祉職)
- 「複雑な制度と膨大な手作業。ミスが許されない重圧の中、一人で数人分の業務を抱え、相談できる相手もいない。」(20代・事務職)
人員不足の課題は見えていた…
2014(平成26)年に内閣府地方分権改革推進室が自治体へ行った実態調査において、地方分権改革の課題に関する調査結果では、少数の職員で各種事務を処理する中、分権により更に事務が増加すると対応が難しくなるという『体制整備』が、当時から既に課題として認識されていました。
「地方分権改革の実態調査結果(2014)」より.jpg)
自治体業務量の増加
少子高齢化や格差の拡大、頻発する自然災害への対応など、自治体が向き合うべき課題は多様化・複雑化しています。特に児童虐待対応、DV被害者支援、生活困窮者への伴走型支援など、マニュアル通りにはいかない「対面での深い関わり」を必要とするものへ激増しています。また、デジタル化(DX)によって便利になる一方で、現場ではシステムの維持・管理や、頻繁に行われる制度改正への対応という新たな実務が発生しています。マイナンバーに関わる情報の精査や、デジタルに不慣れな方への対面での丁寧なサポートなど、「システムを正しく、安全に動かし続けるための目に見えない手作業」が現場を圧迫し、本来もっと時間をかけるべき住民支援の時間が奪われているのが実態です。
また、「地方分権一括法」に基づき、事務権限が国から自治体へと移譲されました。これにより、画一的ではない『地域の実情に寄り添ったきめ細やかな行政サービス』が実現できるようになったことは、住民の皆様にとっても大きな意義があります。一方で、こうした柔軟な行政を責任を持って実行するためには、高度な専門性と複雑な実務を支える確かな体制が不可欠です。各改正に伴う事務フローの構築や丁寧な住民周知など、サービスとして形にするためのプロセスは多岐にわたり、一つひとつの業務の重みが増しています。地域主権の理想を確かな価値としてお届けするためにも、削減傾向が続いてきた人員体制を、現在の膨大かつ高度化した業務量に見合う最適な形へと再構築していくことが、今まさに喫緊の課題となっています。
【参考:地方分権一括法の概要】
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職員の心身の限界は、公共サービスのストップを意味します
厚生労働省の「令和6年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」では、メンタルヘルス不調により連続1ヵ月以上休業した労働者がいた事業所割合が10.2%であり、前年度(2023年度)から▲0.2%となっていますが、依然として高水準となっています。
自治体職場では、地方公務員安全衛生推進協会が毎年統計資料を出しています。「【令和7年】地方公務員健康状況等の現況の概要」(2024(令和6)年度の状況)によると「精神及び行動の障害」による長期病休者数(10万人率)は、2,372.9人(10万人当たり)であり、前年度(2023年度)より86.5人(3.78%)増加、さらに10年前(2014年度)との比較では約1.9倍となっており、この10年で、現場の負荷は限界を超えたと言っても過言ではありません。『余裕のない現場』では、迅速な災害対応も、細やかな福祉支援も維持できません。 職員が健康に働ける環境を守ることは、住民の皆様が安心して暮らせる権利を守ることそのものなのです。
近年のメンタルヘルス不調の特徴として、ストレスの多様化と若年層の不調者の増加があげられます。自治体職場では人員不足等による長時間労働や業務の複雑化、また若年層では新たな職場環境や学生時代からの環境変化に馴染めずメンタルヘルス不調を訴える職員が多く、近年では住民や利用者からのカスタマーハラスメントをはじめとする各種ハラスメントを起因とする事案も生じており、ベテランから若手までが等しく過酷な環境に晒されています。


「あたりまえの日常を守るために」「公共サービスにもっと投資を!」
「あたりまえ」を、次の世代へつなぐために。
蛇口をひねれば水が出る、困ったときに相談できる。この「あたりまえ」の質を向上させるためには、適切な「人員」という投資が不可欠です。私たちは、より暮らしやすい社会をめざし、質の高い公共サービスを持続的に提供できる体制を求めていきます。
人員の確保、人材の定着が重要です。自治労は2024年に動画を作成しています。参考までにご覧ください。

