
選評● 写真を見たほとんどの人が「すげぇー」とうなってしまうような作品です。国会議事堂と富士山が一枚の写真に一緒に写り、しかもその風景が尋常じゃない色彩で染められている。写真には具体的に出てきませんが、この作品を撮影するためには撮影ポイントを探し、適切なレンズの選択をし、適切な季節と天候が来るのを待ちと様々なことを考慮し、最後にチャンスの日が来たらすぐに行動する。努力の結晶としての1枚です。
【一般部門】

選評● 無数のこいのぼりの前で子どもの写真を撮る家族の様子をとらえた作品。この作品の印象を強くしているものは当然背景にある沢山のこいのぼりですが、それを強調する構図のうまさがこの作品を成り立たせています。写真を撮る親と撮られる子供を画面の両端に置き画面のバランスをうまくとっています。また、下部に周りの人たちの頭部を少し入れていることも画面全体に視覚的リズムを与えています。
【ネイチャー部門】

選評● 山の中腹にあるお地蔵さんとそれを取り囲む自然をとらえた一枚。山の緑、空の水色、そして枝垂れ桜の淡い紅色(桜色)。この三つの単色で構成された写真です。その中央によだれかけと頭巾を着けたお地蔵さんがいます。そのよだれかけと頭巾の赤色が三つの単色の中で強い印象で目に入ってきます。そして、山の緑と枝垂れ桜が見るものを春という季節に誘います。絶妙な色の組み合わせを選択した作者のセンスが光る作品です。
【携帯・スマホ部門賞】

選評● タイトルに朝とあるので通勤途中で遭遇した風景かもしれません。変哲のない街の風景が突然現れた虹によって特別な風景へと変化した瞬間をとらえた作品です。この作品は、スマホ・携帯部門にふさわしい作品だと思います。いつもの日常の中で見つけた非日常を手元にあるスマホでパチリ。日々暮らす当たり前の風景の中でも時々このような瞬間が現れたりします。それを記録する大切さを教えてくれる作品です。

選評● おそらく冬の動物園で、雪の積もるなかレッサーパンダが笹の葉を食べているところを撮影した作品です。寒い中、目を細めて舌を出しながら夢中で笹を食べるその様子がいかにも愛らしく、レッサーパンダのかわいらしさがよりよく写真に出ています。アップで撮影したことにより背景の雪、笹の葉以外の余計なものが画面に入らず、より強い印象を作っています。自分の撮りたい対象に集中した結果でしょう。

選評● 所沢市の比良の丘で撮影された作品です。この丘のシンボルのような大木に青々とした葉が生い茂り生命の力強さを感じさせます。画面の色は空の青色と樹木と下草の緑の二色だけで、構図は写真の真ん中に大木を配置しています。このシンプルな色の組み合わせと構図がこの大木の持つ生命力をストーレートに見る側に感じさせています。下手な受けをねらわず自分の感じたことを外連味なく表現し、好感の持てる作品です。

選評● 山梨県の七面山敬慎院の山門からおそらく早朝の富士山をとらえた作品です。山門越しに見える富士山にあたる光の微妙な色合いが淡い色で描かれた絵画のように見えます。その風景だけを見ていると幻想的な感覚になります。しかし、シルエットの人物と山門の左側に差し込んでいる薄い橙色の光に照らされた壁が現実感を作り出しています。幻想と現実が混ざった不思議な感覚になる作品です。
第25回ベストショットコンクール
選考をとおしてまず感じたことは、写真のうまさにかなり差があるということです。過去の受賞もある程度同じ人たちが受賞しているようでした。これは決して悪いことではありません。良い作品が受賞するのは当たり前のことですから。しかし、写真の表現とはうまさだけではありません。私は撮影の仕事以外に写真専門学校で講師をしています。ゼミの授業では繰り返し述べることがあります。イメージ(写真のこと)とは、本来ものの見方やとらえ方、あるいは考え方が映像になったもので、もの見方のないイメージは写真ではないということです。大げさに言うと、その写真の裏側に撮影者の価値観や哲学、思想が反映されている必要があるということです。これはプロを目指す若者たちに向かって述べる内容ですから皆さんのように楽しみとして撮影する人たちにはあまり関係ないかもしれません。しかし、自治労という組合の中でのコンクールですからカメラ雑誌とは異なる作品の特徴があってもよいのではないでしょうか。
旅行やお祭りといった特別の時だけではなく、日常をもっと撮影してもよいのではないでしょうか。例えば職場や住んでいる町の様子など。このような対象を何枚かで組み写真にしてみることをお勧めします。写真を組むということはそこに何かのテーマがないとなかなか組めません。そのために一枚写真にはない面白さと難しさがあります。つまり自分は複数の写真で何を表現したいのかを考えざるを得ません。今までにない写真との向き合い方が必要になります。皆さんさらに深い写真の世界に向かってください。それは自分を見つめる作業にもなります。
(機関紙「自治労東京」新年号より)

写真家 鈴木 邦弘さん
雑誌を中心にフリーの写真家として活動。『自治労通信』および『世界』などにドキュメンタリー写真を発表。93年「森の人・PYGMY」で第18回伊奈信男賞を受賞。日本写真芸術専門学校主任講師。日本写真家協会(JPS)会員。自治労本部情宣セミナー分科会講師。
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