

〈選評〉色づいた木々の間から木漏れ日が差し、ブランコとジャングルジムで子どもたちが、楽しそうに遊んでいます。何気ない秋の日のスナップ写真のように思われます。しかし、作品をよく見てください。色の構成と子どもたちの配置です。まず、色を見てみましょう。紅葉した木々の赤や黄色が画面の上部に広がっています。そして、画面の中央部は遊具の色が紅葉の上部とつながり、遊具の青色は地面の青みがかかった黒色の影につながります。そして、子どもの配置は左右に配置され、重なりもありません。作者の対象を見る目の確かさが光った一枚です。


〈選評〉流し撮りの作品です。空港という直線的な光と何種類かの光に限定される場所で撮影したことが成功の原因かと思います。光跡が流星群のようにある塊をもったイメージを捉えられています。飛行機を真ん中に、上部は白、下部は青の流星群といった感じですね。ただ、写真全体の印象として何かが足りないような気がします。何なのでしょう。無機質感、記号化が強すぎるのかもしれませんね。派手な象徴化はうまいけれど、有機的な部分が足りないということかもしれません。


〈選評〉タイトルどおり夜明けの時間帯の街の様子を捉えた作品です。撮影者はネイチャー部門に応募しているくらいですから、上空の月と飛んでいる鳥の群れをメインに考えていると思います。しかし、この写真の面白さは空と地上でまったく異なる移動がされていることがおもしろさのポイントだと思います。ですから、この作品は一般部門でも応募可能でした。そして、写真的な部分では、自動車をはじめとする人工物を下部にしたことが、成功していると思います。


〈選評〉360度カメラで都庁のプロジェクションマッピングを中心に上映中の様子を撮影した作品です。これは確かにネオですね。人間の視覚を超える写真です。今までもこのようなタイプの写真はありました。例えば、空撮写真などは典型ですね。今は普通に見たり撮ったりしています。360度写真に関しては最近見るようになりましたが、その用途、実用性についてはこれからもっと研究され進んでいくものでしょう。人間には見えない世界がみえるというところでの面白さはわかりますがそれ以外のところがよくわかりません。


〈選評〉リトアニアに旅行に行かれたときの偶然なのか、結婚式に招待されてリトアニアに行ったのかはわかりませんが、教会での結婚式のワンシーンを撮影した作品です。普通、結婚式の写真というと新郎新婦の幸せそうなその表情やお祝いに来た人たちの楽しそうにしている様子など新郎新婦や参加者が被写体として中心になりがちですが、この作品は圧倒的に教会内部が被写体の中心になっています。この教会の美しさに圧倒されます。建築様式はわかりませんが両側の柱と天井のアーチをバランスよくシンメトリックに写していることがより強調しています。撮影技術を感じさせる作品です。


〈選評〉この作品は、撮影者のその場でのアイデアと創造力が作り上げた作品です。撮影者自身の全身を黒いシルエットで写し、ワタスゲ(わたげのような果穂)がまるで洋服の飾りや柄のように見えます。そのうえに、右上のニッコウキスゲの鮮やかな黄色が、写真全体を引き締め強烈なアクセントになっています。作者の鋭い写真的感覚がこのような素晴らしい作品を作り上げたのでしょう。


〈講評〉今回は比較的撮影の意図がはっきりしている作品が多かったです。気になる点もあったので指摘しておきます。非常に硬い話になるので、我慢して読んでみてください。美は2種類に分けられます。ひとつは内容としての美、もうひとつ形式としての美です。以下にこれらの美を説明します。内容としての美:芸術は真理を伝える媒体である。感覚を通じて真理を掲示するものである。形式としての美:内容の価値とは関係なく、見た目や形が美しいもの。そして、あなたが撮影した写真に、これらの2種類の美がバランスよく含まれるとその写真はあなたにとって満足できる作品ということです。では、このようなことがどうすれば出来るのかという事を二人の偉大な写真家が語っています。ウォーカー・エヴァンスとスティーブン・ショアです。二人は対談しているわけでは無く、過去のエヴァンスのインタビュー記事を読みショアが語っているという形式です。エヴァンスは語ります。「直感的に(写真を)撮った後、その写真が実際の瞬間を“超越”したものでない限り、私は何もしなかったということになるので、その写真は破棄します」そして、この発言を受けて「“超越”の瞬間に起こるある種の「乗っ取り(taking over)」(この翻訳があまり良くないので「引き受ける」と言い換えます)。この「引き受ける」という感覚は長年私自身も撮影の際に感じるものだった」とショアは語ります。(IMA9月号2021)つまり、超越や引き受けるということは、撮影の場で撮影者が独り相撲しているのではなく、被写体との一種の合体のようなことが起こるということだと思います。この感覚は、プロもアマも関係ありません。アマのほうが起こりやすいかもしれません。今後、撮影時に自分の中でこの感覚が立ち上がってきたかを確認してください。それがあなたと被写体の合作です。

写真家 鈴木 邦弘さん
雑誌を中心にフリーの写真家として活動。『自治労通信』および『世界』などにドキュメンタリー写真を発表。93年「森の人・PYGMY」で第18回伊奈信男賞を受賞。日本写真芸術専門学校主任講師。日本写真家協会(JPS)会員。
