〈選評〉横浜みなとみらいでの花火大会でしょうか。同時に打ち上げられた花火の数の多さとその美しい風景に感動といいたいところですが、この写真のポイントは下部に写されている立錐の余地のない人々の様子です。手に手にカメラやスマホ持つ人たち、三脚、一脚にカメラを据え本格的に撮影する人たち、無数に光るカメラのモニターの明かり。そして縦位置(メリーゴーランドのような余計なものを入れない)。通常の花火の写真とは異なり、ドキュメンタリー的な要素を持つ作品になっています。

〈選評〉長野の地獄谷野猿公苑での撮影でしょうか。温泉に入っている猿が毛づくろいをされ気持ち良い表情とポーズをしています。構図がシンプルで、上下左右とも余計なものを入れず多少の空間的余裕を入れて切り取っています。また、のけぞるようなポーズを絶妙なタイミングでシャッターを切っています。狙っていたのかはわかりませんが、結果的に非常に単純ですが(色の組み合わせも)、印象の強い作品になっていると思います。

〈選評〉登山の途中の休憩の際に?ここまで歩いてきた道を撮影した作品です。縦位置での撮影が視界に入る余計なものを削り、構図に締りを与えています。そして、真ん中にある細い道(歩いてきた道)を中心に、左に山の斜面の日陰部分、右に靄のかかった斜面、手前の岩と灌木、そして、青空に広がるすじ雲?と画面全体にそれぞれの撮影対象がバランス良く配置され、作品の印象強くしています。撮影者のセンスを感じる写真です。

〈選評〉この作品は何の説明もいらない写真ですね。タイトルが示すとおりです。いろいろな喜びがある中で最高の喜びのひとつです。お母さんもお父さんも、赤ちゃんも、写真に写るそれぞれが最高の表情をしています。おそらく、生まれてきた赤ちゃんは初めての写真になるでしょう。赤ちゃんらしい表情で写っています。この写真は写る親御さんだけではなく、写真を見る人たちにも喜びを与えてくれます。ある意味喜びを写した写真の中でも、単純ですが最強の一枚かもしれません。

〈選評〉鶴が羽を広げて飛び立つ場面を撮影した作品です。飛び立ってすぐの低い位置にいる丹頂鶴の様子を見事にとらえています。首、胴体、足の部分が一直線になり、その真ん中で上に広がる羽、動物の持つ造形的美しさの瞬間を逃すことなくシャッターを切っています。また、ピントもボケることなくシャープに写っています。そして、冬という季節の持つ色、雪の白に浮かび上がる鶴の白、この組み合わせも絶妙だと思います。撮影者の確かな撮影技術を感じさせる作品です。

〈選評〉多数の子どもたちや保護者?が参加した芋ほりの様子を撮影しています。画面の端まで続く広々とした畑、その上に広がる空と雲。この場の新鮮な空気を感じます。芋ほりをしている人たちと広々とした空間を画面に入れたことで、この場所の空気感をうまく写真を見る人に伝えていると思います。また、芋ほりのような下を向いてする作業は、作業をする人たち全員の顔が写りにくいです。声をかけて顔を上げてもらった写真も撮影しておくことをお勧めします。

〈講評〉写真の面白さはどこにあるのだろうか?今回の審査を終えて考えていたことです。一般、ネイチャー、それぞれの部門に特徴がありました。まず、一般部門は残念ですが応募枚数がちょっと少なかったです。テーマが限定されるとこの写真がこのテーマに合っているだろうかなどと考えてしまのかもしれませんね。あまり窮屈に考えず、テーマと少しずれていても良い写真だと思ったら思い切って応募してください。その辺の最終的判断は私たちがしますので。また、全体の印象としては身近なものを撮影している写真がもっと多くても良いかなと感じました。写真は特別な出来事があると撮ることが多いと思います。一般部門では旅先やお祭りなどの特別なことだけでなく、日常でのちょっとした特別なことを撮影した写真を見たいと思いました。次に、ネイチャー部門ですが、こちらは例年と変わらぬ応募枚数でした。そして、スマホではなくデジカメで撮影された写真が多かったです。この部門に応募される方々は、本格的に写真に取り組んでいる方々が多く、質の高いイメージを追求し、撮影している作品の数々でした。そのため、選考はいつも悩みます。それぞれ理想とするイメージを追求し質の高い写真を撮影してください。さて、最初の問いの答えは?それは撮影した世界をあなたが実際に経験しているということだと思います。バーチャルが幅を利かせる昨今ですが、写真は基本的には現場に行かなければ撮れないということです。そこで得た実感はあなただけのものです。

 写真家 鈴木 邦弘さん

雑誌を中心にフリーの写真家として活動。『自治労通信』および『世界』などにドキュメンタリー写真を発表。93年「森の人・PYGMY」で第18回伊奈信男賞を受賞。日本写真芸術専門学校主任講師。日本写真家協会(JPS)会員。