機関紙「自治労東京」連動企画 2026年新春特別対談
未来の公共をつくるのは誰か ー今、自治研活動の「可能性」を語ろう

2026年10月には、「ふくい自治研全国集会」が開催されます。その一方で一見難解な「自治研」への関心は低下しています。今回は組合員のみなさんに自治研のおもしろさと幅広さを実感していただくために、自治研活動に最前線で取り組む4人の方にお話を伺いました。自治研活動の多様な「カタチ」。それが組合員、職場、地域社会に与える「力」を知る機会になれば幸いです。このページでは、紙面に載せきれなかったお話を含めた全文を公開中!ぜひご覧ください。


松村委員長(以下、松村): 本日はお集まりいただき、ありがとうございます。都本部委員長の松村です。 今日は、「地方自治研究」すなわち「自治研」をテーマに、都内で最も先進的な取り組みをされている皆さんにお話を伺うべくお越しいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。さて、2026年10月には「福井自治研全国集会」が控えています。しかしながら近年、都内各組合における自治研活動がやや低調であること、そして全国集会に合わせて募集される地方自治研究賞への論文・レポートの応募が、東京都在住の組合員において伸び悩んでいるということで、自治労東京としては強い問題意識を持っています。 本日は「自治研は難しいもの」「一部の専門家がやるもの」といった固定観念を払拭し、本来、私たち自治体職員・組合員一人ひとりにとって日常業務を支える道具であり、未来への羅針盤であることを確認できればと考えています。まず最初に、2024年地方自治研究賞・論文部門において最優秀賞を受賞された、都庁職・福祉保健局支部の縄田さんの方から自己紹介いただければと思います。よろしくお願いします。




縄田: 私は自治労都庁職の書記長もしていますが、福祉保健局支部でも書記長を務めています。自治研における活動の主体は支部単位となりますので、本日は福祉保健局支部の組合員としてお話しさせていただければと思います。
松村: 次に、組合が主体となった先進事例の視察など、非常に活発な職場自治研を牽引されている東京清掃労組練馬総支部の松永さん、お願いします。
松永: こんにちは。東京清掃労働組合・練馬総支部で執行委員長を務めている松永と申します。職場は練馬区の練馬清掃事務所で、特別区における清掃事業を担っています。よろしくお願いします。
松村: 続いて、子ども食堂など地域住民と深く連携し、地域協働の自治研を推進されている西東京市職労の後藤さん、お願いします。
後藤: 皆さんこんにちは。私は2015年に、市職労の中に「西東京自治研センター」を創り、創設以来、理事長という形で活動をしています。 職場は今、「福祉丸ごと相談」窓口、いわゆる生活困窮者の相談業務を中心に担当しています。入職以来ほぼずっと、40年近く福祉の世界におり、組合と職場、地域子育てという形でやってきました。今日は自治研について皆さんとお話ができたらと思います。
松村: 最後に、都本部で自治研を担当し、全国の自治研中央推進委員でもある西岡書記次長の方からよろしくお願いします。
西岡: 都本部で自治研を担当しております書記次長の西岡です。出身は東京職安労組、ハローワークです。おそらく自治労の中でも、一番自治研と縁遠い国の組織の出身です。都本部専従になって5年になります。初めから自治研を担当させていただき、全く分からない中でしたが、一番縁遠いところから来た人間が担う自治研というのも、可能性があって面白いのではないかと思い、担わせていただいています。
松村: みなさん、よろしくお願いします。さて、自治研と言ってもそのアプローチは多様で、本日はその代表的な3つのモデルを皆さんにご紹介していただければと思います。まずは縄田さん。論文の最優秀賞、誠におめでとうございます。論文『安くて美味しい直営給食のすすめ』、拝読し、大変刺激的でした。テーマは児童福祉関連職場の給食調理ですが、なぜこのテーマだったのでしょうか? 2023年の給食調理会社の経営破綻問題など、公共サービスの民間委託リスクが顕在化していますが、どのような問題意識から筆を執られたのか、この点についてお伺いできればと思います。
ふとした疑問から浮かび上がったテーマ
縄田: まず、なぜこのテーマで論文を執筆したかといいますと、4月、5月頃に、直営の調理職場で非常勤職員が足りないという問題がありました。欠員が出ており、常勤、非常勤、会計年度任用職員まで超過勤務をして、何とか業務をこなしているという状況でした。職場のヒアリング等を通じて、「もうどうしようもない」という悲鳴のような声まで出ていました。「この状況だと現業職員は採用ないし、もはや非常勤職員も集まらない。もう超勤するしかない」という状況で、支部長と一緒に頭を悩ませていました。
その時は、会計年度任用職員制度の問題として物事を捉えました。その後、同じ時期に、別の職場で給食調理委託の入札が不調になってしまったという出来事がありました。どうしようもないところではあるのですが、それが当たり前になりつつある現実もあります。その中で、「そもそも不調になる金額はいくらなのか」ということを調べてみようと思い、最初に調べたのが一番大きい児童相談センターというところで、1億円でした。入札はしていたのですが、「1億円もあったら何人雇えるのだろう」と考えさせられました。
そうすると今度は、会計年度任用職員の問題から現業職員の採用、というところに思考が繋がりました。会計年度職員の問題と給食調理の問題は、少し距離のある問題ではありましたが、「給食職場」を中心として何か書けないかという発想から、二つを繋ぐことで、常日頃、我々がこだわっている「やはり直営でなければできないこと」について、何人かの給食調理の方にヒアリングをして、「直営の魅力」を聞いていきました。あまり時間は割けなかったのですが、そこから、偶然ではありますが、順調に数週間の間に構想が固まり、1か月ほどで書くことができました。今回に関しては、1年間研究を積み上げて、といったものではありませんでした。ただ、そもそものきっかけは、その年は自治研のイベントがあるということで、昔から支部として自治研に力を入れていました。今回は自分が出したのですが、昔は毎年のように支部の人がレポートを出していたということがわかりました。支部の人たちの名前がいっぱい出てきて、知っている人の名前もあり驚きました。そうしたことから、土壌も実はあって、自治研という活動は身近な存在であったのです。このイベントがあることを知り、論文を書く前に、自治研を盛り上げるために支部から旅費を出すから組合員にレポートを出してもらおうという企画をしました。それにあたって、私が出していないのでは少し恰好がつかないということで出したというのが、始まりでした。残念ながら、当事者・組合員の参加者はゼロだったので、そこは次回の福井自治研での課題だと考えています。

松村: 具体的に経費も含めて、たくさん調べて比較をされていますね。公共サービスの委託推進は論文に書いてあるように「経費の削減」と「公共サービスの質の維持・向上」という2つがあります。その経費が内実を伴って削減できているのかというところまで調べておられることが凄いなと感じます。公共サービスの質について、特に給食職場は、個別の対応などが質の向上につながっていく、ということまで書いていただいています。 実際問題、今回この論文で書いたことを、今後の組合活動にはどのように繋げていけるのか、今のお考えを聞かせてください。
縄田: 立場上、私自身が牽引していかなければならないのですが、「運動」という形で結びつけられていないのが現状です。ただ、やはり人が足りていないのです。常勤も非常勤職員もです。今のところは「超過勤務」という形でなんとかサービスの提供を続けています。しかしどう考えても限界が来ているというか、明らかにおかしいものを職員の負担になすりつけているだけであるという今の状況を、窓口、職場の職員等に、常々伝えるという部分でしか今のところできていない状況で、正直もどかしいところではあります。自治研を運動にまで結びつけられていないのです。
活動の原点は「危機感」
松村: それでは続いて、松永さんに伺います。「職場実践としての自治研」について、昨年提出されたレポートにある「自分たちの仕事は自分たちで創る」「公共サービスの質を高め続ける」、そんな言葉に清掃事業のプロフェッショナルとしての強い誇りを感じました。その活動は都から23区への事業移管と、その後の合理化・委託化の流れに対抗するという、そんな文脈で始まったんでしょうか?
松永:おっしゃる通りです。 私はこの仕事に就いたのが1990年(平成2年)ですが、東京清掃労組自体の自治研活動というのは、1970年代ぐらいにはもう行われていました。当時は写真や記録でしか知ることができないですが、私が入都した当時から既に23区の清掃事業は各特別区に移管するという考え方が繰り返し出されていて、労働組合としてはいわゆる区移管闘争、いわば安易な合理化・委託化に対抗していくという姿勢が非常に強かったです。その時に、清掃の仕事というものは、毎日毎日現場に出てごみや資源を収集しながら、直接住民の皆さんと顔を合わせて会話もする、そういう仕事でしたので「現業」、やはりプロフェッショナルという自覚は早く芽生えました。住民に一番接する最前線の仕事をしている自覚はありました。事業が東京都から各特別区に移管されるときに、「職場がなくなる」という危機感が非常に強くありました。同時に自分たちも、もう公務労働の職員ではなくなってしまうのではないかという不安も大きかったです。今は2000年に事業が移管、2006年に身分移管がされて、収集運搬部門でいえば各特別区の職員の仕事になり、工場などは一部事務組合が立ち上がって中間処理を行っていますが、最終処分場の埋め立て地はまだ東京都の管轄で行われています。当時は仕事に対する先行きの不安がものすごくあり、直営の自分たちがこれからこの職場で残り続けていくためには、今まで職場の先輩たちが続けてきた、地域住民の理解と協力を得る、そのための活動を、今度は仕事に転換していくといいますか、職場の中から組合員の発想をとても大事にしつつ活動してきました。レポートとして出させてもらったのは2005年度からで、いろんな都市に視察交流に行っていますけれども、それ以前は練馬区の中で清掃事務所や清掃工場などの場所を使って、イベント的な集会を開き、そこに区民の皆さんに集まってもらって、私たちの仕事を知ってもらう。「まず知ってもらう」というところから始めていました。そのあとで、理解と協力をいただくというようなことを、組合の運動として行っていました。

松村: 先ほど、職場がなくならないためにも地域住民の理解や信頼が必要だというお話を伺いましたが、ごみの分別収集も、そもそも清掃の若手職員の発言から始まったと伺っています。それから「ふれあい収集」、この取り組みは素晴らしいことだと思います。収集もしながら、やはり自分でごみを出せない家庭に個別に訪問して収集してくるという。こういうのも、やはり地域住民の信頼にも繋がっていくのではないかと思いますが、どうやって始まったのでしょうか。
松永:収集車両に乗ってごみを収集するわけですが、1台分のごみがいっぱいになると車は工場にごみを搬出し、また空になって戻ってくるという、その時間があります。その時間を使って職員は、そのまま自分の担当するエリア・コースに残って、住民の皆さんがごみや資源を出す集積所を、清潔に保ってもらうための活動をしています。 収集すれば必ず多かれ少なかれその住民の皆さんが、ごみを出しに来る時に会いますから。その時に簡単な挨拶から始まって、何か相談事とかあればということで相談を聞いたりして。集積所という場所を接点として、ふれあい収集を始めています。
松村:直接住民に会える、現業職員にとっての一番の強みですね。 先ほど活動の中心が先進地事例視察というお話もありましたが、レポートの年表を見ますと、2005年の札幌市から2023年の座間市まで、継続的に続けられていて本当に素晴らしいと思います。これについて組合員自らが企画をして組合の予算で行っていると伺っています。その中で具体的な学びはありますか。
松永: これは私が所属している東京清掃労組本部の力に頼るところが大きいのですが、例えば神奈川、大阪、京都、そういった大都市の清掃労組との運動としての繋がりの中で、きっかけをいただき、実はあそこの労組はこういう仕事をやってる、とか、もっと違う場所に行けばこういうことをやっているよという情報を支部の組合員にフィードバックして、「よし、見に行こう」という流れです。私たちで言えば所管の清掃リサイクル課が事業執行部としての交渉相手ですが、毎年度の清掃事業の労使交渉を行う中で、自分たちの武器と言ったら大げさですが、組合の側から視察で得たものを当局側に発信することで、向こうの興味をこちらに惹かせるということも意識しています。なかなかこうしたことは行政視察では実現しづらい側面があると考えています。確か2005年度から東日本大震災が起きる2010年度までは組合の視察ではなく、職員としての行政視察で、職員が行きたい場所と行きたい企画を全部プレゼンして、採択されたらそこに視察に行けるという制度だったのですが、それ以降は、全て組合主導でやってきています。経過としてはそんな形です。いずれにしても、例えば一つの都市の労組が清掃事業の中でちょっと面白いことをやっている場合に、それ自体は、今のこの時勢、状況で言えばインターネット等を使ってすぐに検索することはできますし、また何かしらの書籍や資料を見れば情報を得ることはできます。ただそれはそのことだけであって、実際にその取り組みがどのように始まったのか、どういう経過があって労働組合がそこに取り組んで事業として始めることができたのか、あるいはできなかったのかとか、いい面だけではなくて、うまくいかなかった面なども、労働組合として行くからこそ、行った先の当該の組合員から聞くことができるというのが、すごく意味合いとしては大きかったです。
松村: ぜひそうした取り組みが全国に広がればいいのかなと思います。先ほどのふれあい収集や、アシスト事業もそうですが、福祉と清掃がつながることで、ごみを自分で出せない人のとこには個別収集するけれども、いざ災害時にも、あそこには避難できない人がいるよというのを、要は清掃業務で地域で収集している方は分かっていらっしゃるということなので、今後そういった取り組みにも繋がっていくのかなと思います。いろんな経験をされて、地域を見て来られた話を、好事例として全国的に広げていかれるといいなと思います。地域自治研として練馬地域の「ふれあい食堂」にも参加されてるということで、このあとの西東京市職労の後藤さんのテーマにも繋がっていく内容とも思います。清掃労組としてそのふれあい食堂、どうして関わるようになったのかという話を少しお伺いできれば。続いては後藤さんよろしくお願いします。
松永:レポートとして出させていただいた内容でもありますが、清掃事業における視察は回数も深め質を高められている感覚もありました。一方で、ふれあい食堂については、協力する練馬区職員労働組合さんの力が大きいです。私たちは清掃事業については突き詰めることができてきているとは思っているところですが、そこで目にする地域住民の生活までは今一つ見えていないのではないか、という思いがありました。そこに携わるきっかけを考えるにあたって、練馬区職労の組合員の皆さんは、自分たちがその自治体で働く一方で、自身も居住者である割合が多い組織でもあります。その皆さんが、自治研活動として区民集会を開く中で、清掃の分科会を担当させていただく機会があり、つながりました。清掃事業という枠に捉われずに自分たちの視線を新しい方向に向けて考えてみようということで、始まったのがきっかけでした。
松村:まさにそのつながりが自治研でもありますね。ありがとうございます。続いて、西東京市職労の後藤さんに伺います。レポート「震災を機に広がる自治研の学び」を拝読しました。その原点が、2011年の東日本大震災後の福島県新地町の避難所支援にあるということに胸を打たれました。自治体職員としての自治研活動と未曽有の大災害における支援活動、この二つがどのように結びついたのか、お聞かせいただければと思います。
地域とともに歩む「協働」を自治研の中心に
後藤: 今も福島県新地町には毎年行っています。松村委員長も当時行かれていましたね。2011年に自治労東京都本部を挙げて新地町に行こうとなりました。あの時は本当に新地がどうなっているか分からない状況でした。実際に行った際に、「何かをするんじゃなくて、まず見守ってください」というのを現地で言われました。地域に入って、そのことの意味合いがすごく分かりました。私は、公民館の支援に入ったので、そこの中心となっている職員と、地域の様々な団体が結びついて、みんなで助け合っている姿をすごく感じました。震災で支援に入ったというよりも、「まちづくりの原点」を見たような感じをすごく受けました。それ以来、支援するというよりも、この町とずっと関わっていきたいという形で考えていたら、もう15年近くという形になっていました。
ふと振り返った時に、東京で災害が起きた時に、果たして私たちのまちはこういう形で住民と結びついていられるのだろうかという思いが強くありました。新地町は復興が比較的早くもありました。それは住民と行政の結びつきがあったからです。仮設住宅を作る時にもある程度、土地を提供したり、町ごと移転をするとか、すごく住民とのまちづくりを大事にして復興にあたる姿を見て、西東京の中でもそうしたものを作らないと、東京で災害があった時に大変だなという学びになりました。これが西東京で自治研センターを作らなければいけないと感じたきっかけで、2014年に組合の中に自治研センターを作りました。地域の様々な団体と、環境や災害、福祉を一緒に活動し実践を多くしていかなければ、まちづくりは進まないと考えています。そのためのハブ(中心)に、市の職員がなってもいいのではないかということで自治研センターを作りました。いろんな福祉の団体とか環境の団体に声をかけながら、ちゃんと政策を学び、市民と一緒に活動できる組織を作ろうというきっかけが東日本大震災だったなと思っています。 西東京は、2009年北海道自治研で1回、賞を頂いています。その時には「まちの里山東大農場」を守る活動という形で、私がまだ若い頃、環境で市民団体と一緒に活動をしていて。その時に、やはり市民とともに活動をする自治研活動を先輩たちがしていて、私もそれをすごく学びました。その後は、「ワークライフバランス」。ちょうど今年20歳になる娘がいますが、生まれた時に、西東京で初めて男性の育休を取りました。それが自分の中で自治労運動のきっかけになっています。ただやはり育休の制度がその時は確立されていなかったので、育休を取るには、職場や組合の理解も必要でした。その後、やはり地域の理解もないとということで、地域の中でワークライフバランスをどうやって進めるのか、ということでパパクラブを作ったり、様々な地域活動をしてきました。でもやはり、これが組合活動の基本にならなければという思いは、あの震災がきっかけだったと、今は思っています。

松村: 東京で大規模災害が起こった時に、避難所とかは決まっていますが、そこの中でみんなが助け合って避難所を運営していけるのか、そうした不安はありますよね。地域のコミュニティという考え方もなくなってきており、地域の住民同士の結びつきも少し薄れてきているのかなというところが危惧されます。後藤さんのお話のように住民同士の結びつきの中で、地域と地域住民と自治体を結んでいきながら、労働組合が懸け橋となる。まさにそれが本当の意味での自治研であると感じます。 東京市職労では、毎回レポートを応募するということですが、継続のモチベーションはどこから来るのでしょうか。継続することによる組合員の意識変化や影響はありましたか。
後藤: 組合活動でもそうですし、仕事でもどうやってまちづくりしていこうかということで考えていると思います。2年に1度、そのことをまとめる活動を、立派でなくてもいいから、ちょっとみんなでまとめて学び合おうよ、という形を始めました。 で、応募した人には自治研集会に行く資格が出るのです。自分が目的意識を持って、論文を書いて、そのことを全国の仲間と交流したいという思いがあれば、それは積極的に行って学んでもらうような形をしようというのが、組合活動の一つの核になり、レポートが出るようになりました。また、まとめて自分自身の整理にもなりますし、それを職場や仲間に話をすることで、新たな気づきや、それが運動になってくるのもあって。 実際に自治研で自分の職場の問題をまとめて、いわゆる子どもの発達センター「ひいらぎ」のように、障害を持ったお子さんの療育をしている現場などは、民間委託の危機があった時に、その論文がきっかけで、実際に私たちも労使交渉もできたし、その論文が当局の目にも触れて、「あ、やはりこういう意味で、直営の意味ってすごい大きいんだな」という形で、民間委託が止まったりということもありまして。 やはり自分たちが勉強してまとめて、それをある程度公表することの中で、いろんな形で職場を守る活動に繋がることも出てきたりとかするので、そういう意味での組合としての価値とか、効果のようなところもあるので、ちょっと頑張ってまとめていこうね、という感じでやっています。
松村: ありがとうございます。2年間やってきたことをまずまとめて自分たちで整理をして、それをみんなで共有をしていくという形なんですね。やはり共有していくことで、共有された一人一人が持っている、物事に対する観点だったり着眼点が、いろんな考えがあるでしょうから、それがまたプラスに作用して先に進めるという感じでやっていらっしゃるということですね。ありがとうございます。
さて、今、縄田さんの方からは政策提言、そして松永さんの方からは職場の実践、そして後藤さんの方からは地域との協同という、三者三様の話をいただきました。 非常に力強い実践報告と、一見アプローチは違いますが、すごく共通項を感じたと思っています。当局から言われたことをただやるのではなくて、自ら自分たちで地域の課題を見つけながら調査をして、仲間や市民と繋がりながら解決策を実施、実践していく。公共サービスのプロフェッショナルという姿なのかなと思います。 で、ここでちょっともう一つ皆さんにお伺いしたいのが、自治研活動の「本質」、それぞれの皆さんが考える自治研活動の本質をどういうふうに考えられますか。
縄田: 本質と言われると言葉が重いのですが、労働組合が取り組む意義的なところでお話しします。私は労働組合が取り組むのは当然のことだと思っていて、まずやはり自治研というのは先ほどから、特にお二人からあったように、地域貢献・社会貢献的な側面、社会正義的な側面があると思います。我々、うちの支部でいうと、利用者支援の向上ということを言っているのですが、やはり常々私たちの仕事は、都民のサービスの質の向上を考えなければいけない。それを考えるということは、私はやはり裏に、都本部のホームページにも書いてありますけど、「私たちの仕事に対するやりがい」や、それぞれ納得いく仕事がしたいという気持ちで仕事をしている、という部分が絶対にあると思います。そこまで行くと、もはや私は労働条件の一つだと考えています。 実際、最近の退職理由をいくつか見ると、やはり仕事がつまらないとか、上から押し付けられた感があるとか、そういうことがあるので。特に今、少し語弊があるかもしれませんが、「労働条件の一つ」という形で、私は取り組むのがよいかと考えています。 その上で、似たような仕事内容の研究のようなものは、当局というか職場でもよく研修などでやったりすると思うのですが、やはりそれでやる時は色々しがらみもあって、人を増やすようなことは避けたり、空気を読んだ提案をしなきゃいけないというのがあります。
あと、労働組合で取り組む上で一番大きいのは、横のつながりです。今回、私が出した論文は「現業の課題」というところでカテゴライズされたんです。私自身は全くそういうつもりで提出していなくて、「社会福祉職場の課題」のようなカテゴリーがあるので、てっきりそちらに載るものだと思って書いたんです。全然、それが不本意なわけじゃなく、「あ、やはりそう捉えられたか」と思いまして。さらにその後、この論文がきっかけで、現業の会議とかに出ることが増えまして、そこで現業の運動方針とか見ると、「あ、同じことが書いてある、こちらの方が先に書いてたんだ、、、」とか思ったりもして、そこで学ばされることもありました。何が言いたいかといいますと、私は事務職なのですが、やはり公共サービスの最先端は、直接住民と接している現場の方だと思うんです。うちで言うと施設職員などの方々になるのですが、必ず後ろには、隣には、同じ職場には事務職というのがおりまして、やはり事務職も現業のことを分かっていないといけないですし、現業の方にも逆に事務職はこういう考えを持っているんだというのを共有しながらやっていかなきゃいけないと考えています。そういう意味で言うと、それを労働組合で、特に大きな組織で取り組むということはすごい刺激にもなりますし、貴重な機会だと思っています。
松永:もう10年以上昔になるのですが、職場の先輩に「あなたはどこに根付いて生きていくかを考えるのを忘れちゃだめだよ」というのをすごく強く言われました。自治研活動といっても、職員としても日々、仕事として毎日やっていると思うんです。労働組合としてやることは、比較すると制約もすごく少ないですし、自分が興味を持ったもの、関心を持ったもの、刺激を受けたものを自由に取り組める。そこが労働組合として取り組む自治研活動の強みだと思っています。毎日ご飯を食べるために働くわけで、その働く時に選ぶ仕事というのは、何かの縁があったと思うんです。自分の考えであったり、誰かとの縁であったり。それがあって今の職場にいるわけですから、その機会があるからには、そこを探求していくことが、「どこに根付いて生きていくか、そのことをいつも考えなさい」というところにたどり着くのではないかと考えています。だから今まで若い組合員も含めて、職場の中で楽しみながら続けてこれているとは思っています。
後藤: やはり自治研の歴史を見ると、ごみの分別収集が自治研で始まったとかという歴史もあるじゃないですか。やはり、政策とかまちづくりの基本なんだなと思います。 私が最近「子ども食堂」に特化していたのは、たまたま自分が生活困窮の相談員になり、コロナ禍という歴史の教科書に載るんじゃないかという出来事の中で、市役所で「家賃が払えない」、「生活が大変だ」、という人が列をなしている。その現場にいて、いろんな形での対応をして、行政は行政でいろんなことをやったけれど、やはり子ども食堂が地域にいっぱいできて、そこがいろんな方を支えたという現場に直面して、やはり行政だけでは何もできないんだな、と感じたのと同時に、市民と一緒にそういうまちを作っていかなきゃいけないんだなということを考えました。やはり子ども食堂とか、地域の中で子どもの居場所を作る、そのことがとっても必要だなということをすごく感じて。これってやはり労働組合が中心になって、市民と活動しながら、それを政策提言していかなきゃいけないんだなと思ったんですね。皆さんがお話しされたように労働組合ってそんなに縛りがないし、逆に住民と一緒にやることの中で、本当に必要な政策というのを市民と一緒に考えることってできるじゃないですか。一緒に運動して提案して、実現する力にもなるのかなとも思って。さっきお話しした「育休」の話なんかもあり、あの時は本当に仕事を辞めようかなと思ったんです。子ども3人抱えながら、妻も切迫早産で、これで育休取れなかったらどうしようかなと思った時に、地域の人に支えてもらったりとか。その時にワークライフバランスという考え方や、そういう運動があるということで、職場の組合にも支えられたし、やはりそういう働き方を地域の中でもやっていこうよという形の中で、考え方に出会って、僕自身も頑張っていこうかなと思うことができました。自分自身が働いていくモチベーション、特に自治体の職員として働いていくモチベーションみたいなものを、作っていけるのが、「自治研」なのかなと思います。
松村: ありがとうございます。先ほど、ごみの分別収集が自治研活動から始まったという話がありました。傷病人の休日夜間診療も自治労の衛生医療評議会が中心となって運動したことから、自治研活動から全国に広まったと聞きます。やはり労働組合って誰のためにやっているのだろう、という中で組合員のためであることは間違いないのですが、今、後藤さんが言われたように、地域住民と一緒になって、その地域の課題を解決していくことが大事なのかなと思います。そのことが私たちの求める公共サービスの充実や、質の向上に繋がっていくのだと思います。「やりがい」という話もありましたが、自治研は住民のためだけではなく、そこで働いている職員自身がやりがいと、自信を持って仕事ができることをめざす運動でもあるのかなと思います。本日3人からうかがったお話は、やはりどれも組合活動の「核心」であると思います。ただ、組合員の皆さんの中には、皆さんのような実践を難しく感じてしまう方や、日常業務、組合活動の負担から時間が割けないという切実な声もあります。皆さんは、最初の一歩をどういうふうに踏み出したのか、何をきっかけで始まったのか、忙しい中でどうやって活動を継続をされているのか。ぜひ、本当は自治研活動をやってみたい、一歩踏み出してみたいという仲間も多くいると思います。
なかなか時間がない、、、そういう皆さんへ
西岡: 東京だけの話ではないですが、なかなか自治研が盛り上がらず、レポート・論文の本数が下降しています。その要因としては、「地方自治研究」という、ものすごく硬い、ある程度の年代の方だと「財政分析」とか、そういった重いテーマ設定の部分が前に出てきてしまって抵抗感があるということが一つの要因として考えられます。今日、皆さんがお話しされた分野がすべて異なるように、「何をやってもいい」のが自治研だと思っています。ただ、「なんでもいい」とすることで逆に方向性がないから、そこに踏み込めない人もいます。「何でもやっていい」って意外と難しいんですよね。面白がってくれる人たちもいるのですが、そこもやはり枷になっています。じゃあ取り組んでくれる方を増やすためにどうするか。特効薬はもちろんないのですが、今回に関しては2026年に福井で全国集会が開催されるということも含めて、初めてレポートとか論文を出してくれる人たちに、「レポートを書いて福井に行こう」とお伝えしたいです。松永さんや後藤さんのお話にもあった通り、やはり出向いて見るもの、熱量も含めて感じ取るものというのは非常に多いと思うんで、入口として堅苦しい文章じゃなくていい、自分たちが今職場で感じていることを書いてみる。縄田さんがお話しされたように、職場で上司と相談をしている内容とか、それも自治研のスタートなので、職場で感じていることを一つの紙にまとめてもらうだけ、自分の思ってることを書いてもらう。それを一つのスタートとして、全国ではどういったことをやっているかということで福井に行って熱量を感じてもらう。そのために、論文・レポート以外に「エントリー部門」という形で、新たに初めてレポートを書く人の部門を設定しようと、今中央推進委員会の中でも討議をしているところです。なので、やはり敷居が高い、日々の業務に追われていて特別なことはできないと思っている方が、特別なことじゃなくて、日々の業務とイコールなんだよ、というところを感じてもらう仕掛けを作っていきたいなとは思っています。

松村: ありがとうございます。やはり福井に行って、その自治研を肌で感じてもらうのが一番よいのではないかと思いますし。みんながこうなったらいいなとか、もっとこうすればいいのにな、ということをきっかけに、進めてもらえるといいですね。
さて、もう最後になります。今日の議論を踏まえて、機関紙の読者である仲間の組合員、若手の組合員も含めて、明日からできる自治研活動へのエールを最後に、お一人ずつお伺いしたいと思います。
縄田: はい。では、これはぜひ記事に載せて欲しいのですが(笑)。年明け2月に、都庁職・福祉保健局支部として「自治研集会」を開催する予定です。「誰ひとり取り残さない福祉」というのをテーマに、グループワークのような形で座談会をやる予定です。詳細はまだ詰めきれていないのですが、そういったところをきっかけに、福井の案内もさせていただこうと思っています。うちの支部も、ぜひ(新たに新設を検討している)エントリー部門を含めて、組合員の方に参加していただきたいと思います。 自治研というのは本当に、普段のぐちの延長だと私は思っていますので、ともに頑張りましょう。ありがとうございます。
松村: それでは松永さんお願いします。
松永:明日からできる自治研活動、エールになるかは分からないのですが、私は今だと週に1回ぐらいは必ず、自治労本部の自治研ウェブサイトを見ます。過去の全国自治研究集会の応募された論文やレポート、あそこには全て蓄積されています。もちろんその時の時代、時勢に沿って今まで積み重なってきているんでしょうけれど、あの中には、ヒントがすごく隠されているなということを感じています。別に宣伝で言っているわけじゃないですよ、本当にそう思っているのです。実際、レポートとか論文読んでみて、「これ何が書いてあるんだ」と、それでいいんだと思います。ただそこにそれがあるということだけで。そこから、じゃあ見たあなたは何思いましたか、何に気付きましたか、その気付いたことを、自分以外の誰か一人でもいいから仲間と共有して欲しいです。そこから、人それぞれ考え方も違いますし、感じ方も違うから、疑問であったり共感であったり、じゃあこれはこういうふうに考えることができるんじゃないという、その発想がどんどん膨らんでいくことに繋がっていくと私は思っています。特にあのウェブサイトのページは、マンガもありました。あれすごく面白いんですよ。私本当に面白く繰り返し見ていますから。あれが本当に、とっかかりとしてはすごくいいものだと思っていますので、まずそこを見に行くことをおすすめします。
松村: ありがとうございます。それでは後藤さんお願いします。
後藤:私たちは自治研で単組でホームページも作り始めたので、少しずつ活動を、とは思ってはいます。私は自治研活動の場を組合員に少しでも提供をするので、ぜひいろんなイベントに参加をして欲しいなという思いがあります。自治研はさっきお話ししたように論文書くこともそうですが、やはり住民やまちづくりに組合が関わるきっかけを作るので、そこに参加して欲しいなという思いもあります。私たちが様々な機会を作るので、ぜひちょっと覗いて欲しいなと思っています。東京自治研究センターの冊子も、素晴らしい冊子なんですよ。月例フォーラムも色々な講演を行っていたり。いろんな実践があるので、ぜひそういうのに目を通してもらって、ちょっと講演会に参加したりとか、イベントとかに参加して住民と一緒に活動することをちょっと一歩踏み出してもらえると見える世界も違うかなとは思っています。私は子ども食堂のイベントをずっと市民とやっていて、今年は結構大きくなっています。市内で今37ぐらい子ども食堂あり、そこの子ども食堂全体を応援するイベントを12月にやってたりとか。あと今、能登の子どもたちへの支援の活動、交流とかも含めてやってたりとか、ちょっといろんな機会を作るので、住民と触れ合ったりとかいう機会に参加をしてもらって、またちょっと違う世界も見えてくると思います。仕事が大変だけど、そういうことに取り組む中で、もう1回、自分のモチベーションも保ちつつ、きっかけにもなるかなとは思うので、いろいろ僕らは機会を作るので、ぜひ参加をしたり覗いてもらいたいと思っています。
松村: 皆さん本日は、長時間にわたりありがとうございました。 縄田さんの政策という武器、そして松永さんの職場という土壌、後藤さんの地域という繋がり、痛いほど伝わってきたなと思っています。自治研というのはやはり机上の研究ではなく、より良い公共サービスと、働きやすい職場を、私たち自身が調査と実践、そして協働によって創造していく、「労働組合の中で最もクリエイティブな活動」とも思っています。今回、この記事を読んだ組合員の皆さんが、職場や地域で感じた「なぜ」を、ぜひ最初の一歩に変えてくれると嬉しいなと思いますし、私たち自治労東京としても、この特別企画がやった甲斐につながると思っています。また、2026年福井自治研での、皆さんの熱い、溢れるレポートや論文に出会えることも楽しみにしています。ありがとうございました。

